知っておきたいゴールデンエイジ

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前回、こどもの運動不足とそれによるケガの増加についてまとめたものを掲載しました。
関連記事:こどもの体力低下、増えるケガ。顔をケガするこども達。

その際、”いわゆる運動神経”の発達にはゴールデンエイジがあることを一瞬だけ触れました。ゴールデンエイジ論には否定的な意見もあるのですが、概要を知るだけでこども達の健やかな成長の助けになると思います。是非参考にしてみてください。
※運動神経という解剖学的な神経は存在しませんが、一般的に運動が良くできることを「運動神経がいい」と言いますよね。当ブログでも一般的な意味で運動神経という言葉を使っています。

 

こどもの運動発達:ゴールデンエイジとは

 

もともとはスポーツ界(サッカー)から提唱されはじめた概念のようです。なんでも運動能力が急速に向上する時期で10歳〜12歳頃なのだとか。
『この時期にマスターした技術は一生忘れない(体が覚えている)』とも言われています。

 

年齢による体の発達

 

 

スキャモンの曲線がゴールデンエイジの説明によく使われています。これは20歳時の体の成熟を100%とした場合の各年齢での成熟度を表しています。青色(神経系型)の曲線がいわゆる運動神経に関係している部分の成長を示しています。

スキャモンの曲線によると神経系型は、
5歳頃までに約80%まで成熟
12歳頃にはほぼ成人と同程度に成熟
 
体の発達にはこのような傾向があること、こどものスポーツに関わってきた人達の経験的感覚からゴールデンエイジ、さらにはその前段階のプレ・ゴールデンエイジという概念が出てきました。
 
 

プレ・ゴールデンエイジ

 

一般的には2,3歳〜8歳頃を言います。この時期(特に小学校入学前頃まで)はいろいろな動きを経験し生きていくために必要なことを目覚しく習得していきます。

一つの動作を覚えるたびに一つの神経回路ができ、それがいくつも繋がって大きなネットワークができていくイメージです。

来るべきゴールデンエイジに備えて土台となる基本的運動動作を獲得しておきたいところです。

 

外遊びが最大のトレーニング

 

特に幼児期に意識したいことは、やはり外遊びです。運動不足の観点からWHOをはじめ多くの国々では、毎日60分以上の中・強度の身体活動を推奨しています。こどもの場合、外遊びが中・強度の身体活動にあたります。

しかし、こども達にとって外遊びは運動不足改善以外にも大きな効果があります。それこそが運動の神経回路を作り、それをつなぎ合わせ、広げていくことなのです。

遊びの中から基本的運動動作を習得していくのがこの年齢のこども達です。
また基本的運動動作の習得はケガの予防にもつながります

 

【いろいろな動きを経験する】
公園を走り回る、遊具に登る・降りる、砂場遊び、ボール投げ どれも立派な運動です。
バランスバイク、キックスクーター、自転車などに乗ることももちろんです。

 

今はもう昔遊びと呼ばれてしまう鬼ごっこ、ケンケンパ、だるまさんが転んだ、缶蹴り、ゴム跳びなどはいろいろな運動要素を含んだ良い遊びです。

 
【いろいろな場所を経験する】
アスファルトや整備された平地だけでなく坂道、砂利道、ぬかるんだ道、山道などいろいろな環境を経験させてあげることも大切だと言われています。
バランス感覚を養い、危険の予測など身を守る感覚を身に付けることができます。
 

昔のように自由に遊べる環境が減っているので、地域によっては親が環境を整えてあげる努力をしなければいけないかもしれません。

早めにスポーツを始めさせた方がいいの?

 

幼児期から一つのスポーツを英才教育する必要はないと思います。先に記したように幼児期には遊びの中からいろいろな動きを経験することで基本的な運動動作を獲得し、運動神経回路を発達させていくからです。


例えば、こども自身がサッカーが大好きなので幼児サッカー教室に通わせるということは問題ないと思います。ただその教室が年齢に合った内容であることは事前に確認すべきです。楽しみながら運動ができる環境、技術重視の内容でないことが幼児期には大切です。

 

この時期のこども達は、好きなもの、面白いことはとことんやりますが一方で飽きやすいのも特徴です。スポーツが強制的なものにならないようにしてあげましょう。

 

ゴールデンエイジ

 

一般的には9歳〜12歳頃とされています。

技術習得の敏感期と言われ、見たまま感じたままのイメージで技術を吸収しやすいのがこの時期の特徴です。そしてこの時期にマスターした技術は一生忘れないと言われています。”体(脳)が覚えている”という感覚がこれにあたります。

 

幼児期の基本的運動動作の習得が前提

 

”見ただけで経験のない運動を習得”できたり、”一生ものの技術を身につけられる”として魔法の時期のように思われがちなゴールデンエイジですが、幼児期の土台があってこそのゴールデンエイジです。

プレ・ゴールデンエイジに多様な遊びを通して、基本的運動動作に関わる神経回路を広げておく(運動神経の土台を作っておく)ことが大切です。

 

今からではもう運動神経はよくならないの?

 

では幼児期になんらかの理由で十分な外遊びを経験できず、基本的運動動作を身につけていない子はもう運動能力の向上は認めないのでしょうか?

 

答えはノーです。決して手遅れではありません。
こども達はまだまだ成長の途中にあり、個人差も大きいからです。

 

ただ、これまでに体を動かす習慣が少なく、その楽しさや達成感を知らない子に対しては、こども任せではなく親も一緒になって遊んだり運動をしてあげる必要があるかもしれません。

 

学童期からでも外遊び、運動を毎日行うことで基本的運動動作を習得できます。
将来の運動の習慣化、ケガの予防につながる体作りを目指します。

 

いろいろなスポーツに挑戦しよう

 

どんどん運動能力の向上するこの時期はいろいろなスポーツにチャレンジしてみましょう。
その中で自分に合った、”好き”と思えるスポーツに出会えたなら、それは生涯の宝物になるはずです。

 

また目標に向かって特定のスポーツに専念する子が出てくるのもこの時期です。この時期に多くのスキルを学ぶことが将来大きく伸びるための大切なポイントだとされています。
注意:この時期はまだ筋肉が十分に発達していないので強さやスピードを要求するドレーニングには重点を置かないようにしましょう。

そして本人が興味を持てばさらに他のスポーツも経験し、多角的に運動能力を伸ばしていきましょう。それができるのもゴールデンエイジの特徴です。後に専門的なスポーツをする際にも習得が早いなどの利点が多いと言われています。

 

スポーツの達成感、満足感から自分に自信をつけ、様々なことに挑戦する意欲を高めることにつながります。

まとめ

こども達の運動能力が飛躍的に向上するチャンスと言われるゴールデンエイジについて簡単にまとめました。前段階のプレ・ゴールデンエイジにおける外遊びによって、土台となる基本的運動動作を習得することがそのあと迎えるゴールデンエイジにつながります。

現代の生活環境では親が意識的に外遊びや運動ができる環境を整えてあげる必要があります。家族みんなで楽しみながら取り組みたいものです。

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