知ってほしい小児の下肢の変化
外来でよく相談に来られる状態の1つがこのO脚です。
歩き始めた頃から周囲の大人が気づいたり、1歳半健診で指摘されて受診するケースがほとんどです。
赤ちゃんの多くはO脚です。O脚の程度は徐々に進行し1歳半頃がピークとなります(生理的O脚)。
その後ゆっくりX脚へと変化していきます。だいたい3歳頃がX脚のピークと言われています。
この後は、学童期にかけてほぼ成人と同じような形になっていきます。
治療が必要なO脚
くる病
どんな病気?
ビタミンD不足による体内ミネラル(カルシウムやリンなど)のバランス異常によって起こる病気です。多くは成長軟骨が障害されO脚になります。
初期にはわかりにくいことがありますが、レントゲンで成長軟骨周囲(骨幹端)の変形が見られるようになります。
治療はビタミンDの補充になります。しかし、O脚変形が強い場合には整形外科での装具療法、手術が必要になることもあります。
紫外線対策が関係しています
くる病が増えてるってニュースで見たことがあります!!
そうなんです。外来でも増えてきた印象があります。
その原因の1つとして、過剰な紫外線対策があるんですよ。
ビタミンDは皮膚が紫外線にあたることで体内に生成されます。
お子さんの日焼けを過度に気にして、日焼け止めをたっぷりこまめに塗ったり、室内遊びばかりさせているとビタミンDが生成されにくくなります。
夏場であれば数分程度、冬場は数十分から1時間程度(緯度によって異なります)で十分とされています。
とはいえ、こどもの皮膚は薄くて弱く、紫外線には皮膚ガンのリスクもあります。
日光浴をする場合には、日焼け止めをさらっと塗ってあげるのがいいと思います(たっぷりではありません)。
毎日の食事で気をつけたいこと
毎日の食事からもビタミンDを摂ることは出来ますか?
もちろんです!! 毎日の食事も大切です。
ただ、ビタミンDを多く含む食品は限られています。
1. 魚類 さけ、いわし、しらす、さんま
2. きのこ類 しいたけ、きくらげ
3. その他 卵黄(上記よりは少ないですがビタミンDを含みます)
【日本とドイツの暮らし】冬にビタミンDのサプリメントは必要なの?
ブラウント病
どんな病気?
聞きなれない名前ですが、こちらも近年増加傾向にあると言われています。
膝関節の内側の成長軟骨に負担がかかることでO脚変形を起こす病態です。
一度の診察で診断するのは難しく、経過を見ていくことが大切です。治療方針も病院間で異なることがありますので、しっかりと主治医と相談していくことが必要です。
成長軟骨に負担がかかる状態とは?
比較的早期に歩き始めたお子さんに多いという報告があります。また乳幼児の肥満が多い国での報告も多い傾向にあります。
つまり、乳幼児期の未完成な骨・関節にとって自身の体重を支えることそのものが負担になっている可能性があると考えられます。
歩行開始前のベビーウォーカーの使用は慎重になる必要があるということ。
まとめ
- 乳幼児期のO脚の多くは生理的O脚で、治療の必要がない場合が多い
- 過剰な紫外線対策によるビタミンD不足はO脚(くる病)の原因の1つである
- 膝への負担がかかるので、赤ちゃんを早期から無理に歩かせようとしない
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